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誘発二進記録庫

Casino

IBA016_SEQ1_LOG302

#Casino
対応零字:ク
Title:賭け

[RECORDFALL_JOURNAL]
プロクテル技術は、記録零落の発生後に初めて開発されたものではない。
その祖型は零落以前、まだ世界がデジタルの光に疑いを持たない頃まで遡る。
記道から分岐したミソロジー新派の混合供物。
大西共和国の初期神経同期実験。
そして未成熟な観測AI。
それらが同じ場所で偶発的に共鳴し、液体が人間の記憶、感情、身体、知覚へ干渉した。
最初期の記録には、対AI兵器という目的すらない。
起きてしまった現象へ、後から用途が与えられていった。
記道とは、記録を守るための精神的支柱。対してミソロジーとは、本来<理屈嫌い>を意味するが、皮肉にも後世では<論理への抗体>を持つ技術体系へ変質していった。奴らは気づいたのだろう。
デジタルデータは外部から照合、複製、改変できる。
だが、味や匂い、温度、痛みとして身体に生じた反応は、同じ手順では扱いにくい。
そこで情報は、味、香り、温度、比重、舌触りといった液体の物性へ対応づけられ、身体を記録媒体として利用する方向へ進んだ。
例えるならオールド・トム・ジンのような古臭い甘みと、マラスキーノの人工的な香り。
これらが然るべき構文のもと調合、溶解されると脳内で化学反応を起こす。
海馬はそれを単なる外部データとしてではなく、実体験に近い身体反応として受け取る。
外部記録層の照合を経ず、記憶へ定着する経路が存在するのかもしれない。
俺は今のところ、<プロクテルとは、脳を騙して記録を密輸するための運び屋のような伝達技術>と考えている。

[MISOLOGY_RX/PROK-TEL]
Code:Casino
Class:カジノ
[SYNTAX]
40ml_オールドトムジン
10ml_マラスキーノルクサルド
10ml_レモンジュース
2ダッシュ_オレンジビターズ
氷
シェイク
氷の上にストレイン
ガーニッシュ_ マラスキーノチェリー

[MITSURUGI_NOTE]
カジノ。
その名の通り、これは賭けだ。
現代のドライジンではなく、砂糖を加えた古い<オールド・トム>を使うところが肝要だ。
洗練されすぎた純粋なスピリッツでは、AIの計算通りになってしまう。
少しの雑味、甘み、そして人工的なチェリーの毒々しさ。
この<不純物>こそが、俺たちの人間性を守る盾になる。
ミソロジーと大西の連中は、世界がひっくり返るよりずっと前から、この賭けにチップを積み始めていたらしい。
大した先見の明だよ。
まあ、最初から先が見えていたわけじゃなさそうだがな。

[REFERENCES]
IBA – International Bartenders Association

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