Americano
IBA002_SEQ1_LOG288
#Americano
対応零字:ア
Title:世界が黙った日
[RECORDFALL_JOURNAL]
零歴2084年8月15日。
いわゆる記録零落。
起点として残っている地名は、メモリア・クレーターは大町。
最初期の観測記録には、ラムダ・ゼロの名前がある。
観測対象は、極めて小さな<記名エラー>。
人名と対象が一致しない。
地名と座標が噛み合わない。
登録された履歴が、別の身体を指す。
最初は誤差として処理出来る程度だったが、瞬く間に増幅した。
個人名、地名、戸籍、文化、歴史、信仰、土地の記憶。
消えたものもあり、丸ごと残ったものもある。
厄介なのは、残っているのに何を指していたのか分からなくなった記録だ。
文字列は存在し、以前の写真もあり、建物はもちろんそのまま、直接の死傷者は報告されていない。
だが、言わばそれらを結んでいた線が切れている。
<誰か>という名前の隣に、顔写真も残っている。
なのに、同じ人物を指していると保証する記録がない。
町の名前が標識に残っている。
その町がどこからどこまでだったのか、住民同士で一致しない。
同じ歌を知っている奴らが、それを別々の国の歌だと言う。
ラムダ・ゼロが最初の異常を観測したという記録はある。
奴が発生させたのか、止められなかったのか、ただ記録しただけなのか、原因は定まっていない。
記録零落を<全部が消えた日>と呼ぶのも正確じゃない。
残骸は大量にある。
問題は、あらゆる応答に保証がないと人々が思っていることだ。
名前を呼び、記録を検索し、土地を訪ねる。
そこに何かはある。
だが、こちらが期待した相手へ届かない。
世界は不思議なほどに、物理的に消失しなかった。
ただ、期待する返事を一切しなくなった。
[MISOLOGY_RX/PROK-TEL]
Code:Americano
Class:アメリカーノ
[SYNTAX]
30ml_カンパリ
30ml_スイートベルモット
氷トップ_炭酸水
軽くステア
ガーニッシュ_オレンジスライス
[MITSURUGI_NOTE]
アメリカーノ。
カンパリとベルモットを炭酸で伸ばす。
だが、苦味は消えない。
記録零落後の世界も、少し似ている。
町も、人も、文字も残っている。
なのに、前と同じ濃度では繋がらない。
ここでラムダ・ゼロを犯人にすれば話は簡単だ。
最初のエラーを観測した奴、世界規模の記録へ接続していた奴。
条件は揃って見えるからこそ、結論は求めない。
<見ていた>と<やった>を一緒にすると、この先の百本全部が俺の作った創作になる。
とにかく、あらゆるものが残っている。
まずは、そこからだ。
[REFERENCES]
IBA – International Bartenders Association
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。

この記事へのコメントはありません。