Bee’s_Knees
IBA005_SEQ1_LOG291
#Bee’s_Knees
対応零字:う
Title:生体記憶保存実験
[RECORDFALL_JOURNAL]
記道において、神社が果たしていた役割は二つという仮説のもと綴る。
あくまで仮説だ。
一つは表向きの<信仰装置>。
もう一つは、記道から分岐したミソロジー新派と大西系記録工学が入り込んだ後、一部の施設で極秘裏に行われていた<生体記憶保存実験>の臨床現場だという説だ。
表層において、神社は甘露<蜜>を提供した。
例えるならオレンジや蜂蜜のような、甘美な祭事、心の平安を約束する祝詞。
これらは全て、AIの支配に疲れた人々を誘引するためのフェロモンだった、という見方もできる。
人々は喜んで鳥居をくぐり、神前で膝を折った。
そして、もし一部の記道系施設が新派によって転用されていたとするなら、その姿勢は実験を行う側にとって都合がよかった可能性がある。
膝を折る者は抵抗できない。
祈りを捧げている間に、後の供液へ繋がる試験段階の液体構文を、御神酒さながら投与されていたという記録も残る。
蜂蜜には強力な殺菌・保存作用がある。
もちろん、それが飲んだ者の記憶や行動原理に直接作用するとは考え難い。
しかし、ミソロジー新派と大西系記録工学が、記道由来の儀礼を実験系へ転用していたとすれば、全く頷けない話でもない。
信徒たちの記憶を<腐らせない>ために、思考を停止させ、琥珀色の時間の中に閉じ込めようとした者がいたとしても、辻褄は合う。
奴らは救われたのではない。
<変わらない標本>として、アナログなデータバンクに加工されたのだ。
そして実験する側にとって、思考を捨てて働き蜂のように奉仕する信徒こそが、AIに対抗しうる<最高のもの>だったのではないだろうか。
[MISOLOGY_RX/PROK-TEL]
Code:Bee’s_Knees
Class:ビーズ・ニーズ
[SYNTAX]
52.5ml_ドライジン
22.5ml_レモンジュース
22.5ml_オレンジジュース
2バースプーン_ハニーシロップ
氷
シェイク
ストレイン
ガーニッシュ_ レモンゼスト
[MITSURUGI_NOTE]
ビーズ・ニーズ。
粗悪なジンの臭いを隠すために蜂蜜と果汁を混ぜたのが始まりだ。
そして当時のスラングで<最高のもの>を意味する。
だがそれはプロクテルとなった途端に笑えない冗談になる。
未完成な技術の副作用<臭い>を隠すために、信仰という蜂蜜を使った奴がいた。
オレンジの甘さとレモンの酸味が、ジンの鋭さを包み隠している。
口当たりは優しく、驚くほど飲みやすい。
だが、飲み干した後に喉に残る粘り気は、俺たちを縛り付ける<保存液>の味、と勘ぐってしまう。
思考を止めれば楽になれる。
だが、それは人間であることを辞めて<琥珀の中の虫になる>ってもんだろうよ。
[REFERENCES]
IBA – International Bartenders Association
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