Canchanchara
IBA014_SEQ1_LOG300
#Canchanchara
対応零字:キ
Title:仮説5:軌道エレベーター
[RECORDFALL_JOURNAL]
第五の仮説は、他の四つとは少し毛色が違う。
記録零落は、地上で起きた事故でも戦争でもない。
人類を<宇宙環境>へ適応させるための、巨大な実験だったという説だ。
記録零落以前、将愚音ジャパン、大西共和国、華央連邦を含む複数勢力が、共同で軌道エレベーターの建設を進めていたという断片記録が残っている。
計画名として頻出する語が、。
ただし、これが軌道エレベーターそのものの正式名称だったのか、より巨大な計画群を指す符号だったのかは分からない。
目的は宇宙移民。
資源、人口、環境問題。
地上に閉じ込められた人類は、いずれ空へ逃げるしかないと考えた。
だが、宇宙へ持っていくには厄介すぎる荷物が一つあった。
<人間そのもの>だ。
重力、昼夜、共同体が変わる。
故郷が消える。
肉体だけを宇宙仕様に改造しても、記憶と精神が地球に縛られたままでは意味がない。
そこで、人間の記憶や認識そのものを環境に合わせて再編集する実験が始まった、という。
もしこの仮説が正しければ、記録零落はその最大規模の適応試験だったことになる。
古い歴史。 国家。 宗教。 家族。 名前。
地上で人間を人間たらしめていた記録を一度切断し、それでも社会が成立するかを見る。
ラムダ・ゼロは破壊者ではなく、実験を観測するための装置だった。
そして供液から発展した液体記録技術もまた、宇宙空間で人間の記憶を保存・移送する媒体として転用された可能性がある。
つまり、人類は選別されていた。
故郷を失っても歩ける者。 名前を失っても自分を維持できる者。 記憶を書き換えられても壊れない者。
そういう人間だけを、地上の外へ持ち出すために。
だが、軌道エレベーターは完成しなかった。
残ったのは、空へ伸びる途中で途切れた巨大な塔と、地上で記憶を失った人間だけだった。
壮大な実験だったのか。
巨大な失敗だったのか。
あるいは、軌道エレベーターと記録零落を結びつけた奴の妄想なのか。
今のところ、判断材料は足りない。
[MISOLOGY_RX/PROK-TEL]
Code:Canchanchara
Class:カンチャンチャラ
[SYNTAX]
15ml_ライムジュース
15ml_ハニーシロップ
15ml_水
ステア
氷
60ml_アグアルディエンテ・デ・カーニャ
ステア
[MITSURUGI_NOTE]
カンチャンチャラ。
随分と原始的な構成だ。
蜂蜜。 ライム。 水。
そして強烈なアグアルディエンテ。
薬にも見えるし、非常食にも見える。
もし第五の仮説が正しいなら、こいつは宇宙船に積むには妙に理にかなっている。
蜂蜜は栄養。 水は環境。 ライムは生命維持。 そして酒精はストレスと記憶を鈍らせる。
文化なんてものを全部剥がして、人間が生きるために必要なものだけを液体にしたような味だ。
もしかすると俺たちは、宇宙へ行くために書き換えられたのかもしれない。
その割には、まだ地面にへばりついてるけどな。
飲み終わった底には、蜂蜜の濁りが少し残っている。
[REFERENCES]
IBA – International Bartenders Association
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