Clover_Club
IBA019_SEQ1_LOG305
#Clover_Club
対応零字:こ
Title:社交クラブ
[RECORDFALL_JOURNAL]
溶解師に必要な技能とは何か?
レシピの暗記でも反復練習でもない。
あらかじめ整然としたメンタリティと感情的記憶を持たない者は、どんなに手元を取り繕っても適切なプロクテルは生めない。
例えば、論理と感情の境界を卵白<自我>の泡膜で包み、どちらか一方だけが剥き出しにならないよう保持する技術もその一例だ。
少なくとも公式の溶解師は、こうした制御を求められる。
他者の記録へ触れるのだから当然だろう。
現在の溶解師界隈には、突出した<怪物>がいる。
俺が知る限り<実際に目撃した者のみ>を挙げる。
現在、メモリア・クレーターを中心に活動するMJ。
奴のプロクテルは<取り扱い危険物>の域に達している。
味と香り、舌触りだけで、飲み手の脳内へ失われた記録を異様な精度で立ち上げる。
本人の記憶と干渉することさえある。
次は白龍。
記道旧派の系譜にいる特級公式溶解師で、古い神事の手順を残したままプロクテルを扱う。
記録工学局のエリートだが、出世の経路からどこか外れている。
何かしらの理由があると、俺は踏んでいる。
そして、ハンド。
正体不明、所在の真偽も不明。
だが奴が真に存在している人間ならば、力こそが全ての暴君であろう。<ハンドに関しては後日、改めて綴る>
少なくとも俺の手元では、奴らに関する記録へラムダ・ゼロの観測網が何度も絡んでくる。
では、俺<ミツルギ>はどうだ?
奴らのような<選ばれし者>ではない。
ただのジャーナリスト崩れであり、観測者だ。
強すぎる光<英雄>は観測網に拾われる。
影に潜る凡人は、少なくとも異常値としては目立たない。
その死角が本当にあるなら、俺の武器になる。
泡<フォーム>の下に隠された液体の色を、人はまだ知らない。
[MISOLOGY_RX/PROK-TEL]
Code:Clover_Club
Class:クローバー・クラブ
[SYNTAX]
45ml_ジン
15ml_ラズベリーシロップ
15ml_レモンジュース
1バースプーン_卵白
氷
シェイク
ストレイン
ガーニッシュ_ ラズベリー
[MITSURUGI_NOTE]
クローバー・クラブ。
古い紳士社交クラブの名を冠したこのプロクテルは、見た目はピンク色で可愛らしい。
だが、口に含めばジンの鋭さと、卵白の滑らかな舌触りが、複雑な余韻を残す。
表面の泡は、中身を隠すマスクだ。
溶解師も同じ。
甘い顔をして客を迎え入れるが、腹の中では常に計算し、観察し、解剖している。
このクラブに入会するには、魂を質に入れる覚悟が必要だ。
[REFERENCES]
IBA – International Bartenders Association
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