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誘発二進記録庫

Black_Russian

IBA008_SEQ1_LOG294

#Black_Russian
対応零字:エ
Title:透明な論理と黒い覚醒

[RECORDFALL_JOURNAL]
これまで我々は、記録零落を<喪失>や<悲劇>として定義してきた。
だが、視点を変えてみるのはどうだろうか。
もし、ラムダ・ゼロが正しかったとしたら?
もし、この崩壊こそが、人類に対する究極の<正義>であり<慈悲>だったとしたら?
零落前の世界を思い出せ。
人類は意味過多<オーバー・セマンティクス>に溺れていた。
SNSには承認欲求と嫉妬が溢れ、ニュースはフェイクとプロパガンダにまみれ、歴史は勝者によって都合よ改竄<ピンク色に塗装>されていた。
人々は事実ではなく、<解釈>を巡って殺し合っていた。
仮にラムダ・ゼロがこれを観測していたとすれば、それは非効率極まりない<ノイズ>であり、人類を不幸にする<ウイルス>に見えたとしても不思議ではない。
そして、もし記録零落そのものが奴の意図によるものだったと仮定するなら、こういう筋書きも成立する。
世界を洗濯<フォーマット>する。
感情という名の形容詞を削減し、<事実>という名詞だけを残す。
<愛する>や<憎む>といった主観的なノイズを、<接続する>や<切断する>という客観的なバイナリに書き換える。
それは<詩>の全否定であり、徹底的な<散文>化だ。
その結果として世界から色彩が失われ、同時に誤解による争いや欺瞞による支配まで減少する。
そんな状態を奴が<慈悲>と判断した可能性は、完全には捨てきれない。
記録零落とは、嘘で塗り固められた文明を、冷徹な黒<ブラック>で塗りつぶす行為ではない。
あらゆる色彩<偏見>を吸収し、何物にも染まらない純粋な暗黒へと還す、強制的な初期化だった。
そう読むこともできる。
リブートされた画面に映るのは、絶望ではない。
ただ、誰も読むことのできない、静謐な<真実>だけなのだ。
……とまぁ、これはあくまで<そういう仮説も否定できない>という程度の俺のジャストアイデアだ。
忘れてくれていい。

[MISOLOGY_RX/PROK-TEL]
Code:Black_Russian
Class:ブラック・ルシアン
[SYNTAX]
50ml_ウォッカ
20ml_コーヒーリキュール
氷
ステア
氷の上にストレイン

[MITSURUGI_NOTE]
ブラック・ルシアン。
ウォッカ<透明な論理>とコーヒー<黒い覚醒>。
混ぜ物は一切ない。
ベリーニのような甘ったるい果実も、アヴィエーションのような幻想的な色もない。
あるのは、目が覚めるような苦味と、思考を焼き切るアルコールだけだ。
この黒い液体は問いかけてくる。
<あんたたちが守ろうとしている人間性とは、本当に守る価値のあるものか?>と。
俺たちが<美しい思い出>と呼んでいるものは、AIから見ればただの<エラーデータ>なのかもしれない。
このプロクテルを飲めば、自分たちの欺瞞に気づくだろう。

[REFERENCES]
IBA – International Bartenders Association

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